破廉恥
快楽亭ブラック=ローランズ・フィルム 「川柳の芝浜」「カラオケ寄席」「一発のオ○ンコ」
私は勇気がなくって、ブラックの高座をまだ生で観に行ったことがない。その憂さを晴らすべく、このDVDを観たのだが、何といっていいのか、もう言葉がありません。よく耳にする言葉に“落語を聴きに行くんじゃなくって、落語家を聴きに行く”というのがあるけれど、その最たるものがブラックかもしれない。特別映像の川上史津子さんとの対談を観ていると、ブラック、意外とシャイな人なんだなと思う。そのシャイな人が“オチョボ口”(立川流の噺家の言)で、次から次へと繰り出す禁止用語満載の落語が面白くないわけがない。
「川柳の芝浜」は、川柳川柳を良く知っている人には、堪らない一席だろう。テレビのリポータに川柳がなって、国民の声を代弁してその当該の人の家の前で大便をするという箇所は笑った。
「カラオケ寄席」では、念願の『涙の圓楽さん』を聴けました。そして、当代の大名跡の噺家を罵倒し、先代の師匠を懐かしがる人に“貴方はどちらからいらっしゃったんですか”と聞くと、その人が“宮城から”と答え、“どうりで、仙台を懐かしがる”というサゲもなかなか秀逸。
「一発のオ○ンコ」は、ジョークでもなんでもなく、ソープランドの店長が、三人で一発のオマンコを終えて店を出る親子三人の背中に掛ける“どーもありがとうございました。どうぞ、良いお年を”という声には万感迫るものがあり、涙を禁じえなかった。立派な人情噺である。
この三席の高座のどれか一つが、特に素晴らしい高座だというわけではないのだけれど、しかし、この三席が収められたこの一枚のDVDは、快楽亭ブラックという噺家を見事に体現した名盤だと言えると思う。このDVDを買った後に、レンタルもされていることを知ったのだが、買ったことには悔いはない。
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