カテゴリー「CD」の45件の記事

2010.06.13

東横落語会13

金原亭馬生=小学館 「酢豆腐」「花見の仇討」
馬生の新しい演目が聴けるだけでも嬉しいのに、これがまた「酢豆腐」ときてるんだから、その喜びも倍加します。馬生の発する“コンツワ”“イツフク”“モチリン”なんてのを耳にすると、もう堪りません。
馬生の「酢豆腐」は、兄貴の家に皆が集まって前日から飲んでいるという設定になっているんですね。そして、翌日、酒を出すのも兄貴が嫁さんに言いつけて用意します。しかし、そのカネがあるか問答の中でも、最高に可笑しかったのが、熊さんとの問答。
 “熊さん、お前どうだい、ゼニあるかい?”
 “面白くねーな、なぜって、人の懐あてにしてんだ、そういう時は、熊さん、オアシはありますか、ってなぜ聞かないんだ!”
 ”成程、そいつはリクツだ。熊さん、オアシはありますか?”
 ”いえ、わたしはオアシはありません”
勿論、客席も大爆笑!
志ん朝の「酢豆腐」と聴き比べてみると、それぞれに志ん朝らしさ、馬生らしさが顕われている。志ん朝らしさ、馬生らしさって、なんだと言われると、ちょっと答えに窮するけれど、まぁ、なんとなく解ってはもらえると思うんですが…。あえていえば、虚実皮膜のあわいにある志ん朝と、戯画化された中に真実を垣間見せる馬生とでもいおうか。
この『東横落語会 ホール落語のすべて』は、資料の主要ホール落語会の演者演目一覧を見ているだけでも楽しい。たとえば、『よってたかって古今亭志ん朝』の巻末にもあるように、東横落語会に志ん朝は早くも朝太の名で昭和33年(第16回)には出ているのに、馬生が東横落語会に初めて出たのは、昭和36年(第31回)になってから。このブランクはなんなんだろうと思ったり(私の見落としがあったらゴメンナサイ)。
しかし、愚痴になるけれど、やはり、『十代目金原亭馬生―噺と酒と江戸の粋』にも、『よってたかって古今亭志ん朝』のような資料をつけて欲しかったですね。

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2009.02.15

昔昔亭桃太郎名演集(1)

昔昔亭桃太郎=ポニーキャニオン 「不動坊」「お見立て」
ポイントが溜まっていたのでそれで購入した。このCD、売れているらしい。私は、桃太郎も好きです。しかし、このCDは如何なものかと思う。収録されているのは、古典落語の演目だが、演っていることは「結婚相談所」とか「金満家族」とか「受験家族」と同じことだ。昇太や喬太郎などが演っているデフォルメとは全く違う。古典落語の筋の間に、御馴染みの桃太郎の駄洒落をダラダラと喋っているだけだ。これだと、自分の新作ネタが尽きたので、ただ古典落語の筋だけを拝借しているかのようだ。このCDのプロデューサーとか、取り巻きにおだてられているのではなかろうか?先日、浅草演芸ホールで演った「弥次郎」をTVで観たが、ヨレヨレの状態だった。もう少し、桃太郎の独自性を発揮した古典落語を演じて欲しい。

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2009.02.11

にっかん飛切落語会(五)

古今亭志ん朝=ANY 「錦の袈裟」「へっつい幽霊」「試し酒」
お目当ての志ん朝から聴く。ここに収録されている演目は、現在市販されているCDにもDVDにも収録されていない。そういう意味では、ファンにとって嬉しい限り。
しかし、なんといっても印象に残ったのは、「試し酒」。これは、芸の善し悪しというよりも、そのマクラが、ある意味で哀しいのだ。まず冒頭で昇太に触れ、“私にもあのような時代があったが、今はもうその元気がない”と語り、そして、こん平の酒の飲み方がいかに乱暴かを語っているのだが、こん平が同じ芝居だとぞっとするという。そして、これまでもこん平は、梅橋と小圓遊の二人の噺家を殺したという。そして、今度は自分が狙われているというのだ。勿論、これは一番の飲み仲間であるこん平のことだからそう遠慮なく言っているのだが、今となっては、ある部分それが事実となっているのだから、このCDを現在聴く私達は、涙なくして聴く事はできない。
また。この高座に聴く志ん朝の声は、あの華やかで艶やかな声ではない。そして、時々、言葉が不明瞭な所もある。そのこともさらに哀しみを増す。
しかしながら、そういうところも窺い知れるこの頃の高座を収録した音源がもっと市販されて欲しいと思うのだが、あるいは、その華やかな志ん朝のイメージを壊さないという意図から、その販売が控えられているのかもしれないとも、邪推したりもするのだが。

錦の袈裟=昭和53年5月25日
へっつい幽霊=昭和60年6月18日
試し酒=平成11年1月25日

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2008.11.09

NHK落語名人選46

春風亭柳朝=ユニバーサル 「つき馬」「佃祭」
柳朝の「つき馬」を聴いてみたら、他と若干変わっているところがあったので、忘れないうちに書いておこう。柳朝のは、牛の若い衆と、馬の若い衆が別の人になるんですね。それと、小せんの速記にあったビールが、柳朝のものにも出てきました。オモチャの行き先表示器もちゃんと出てきたので、あるいは柳朝のものが一番小せんに忠実なのかしら(しかし、小せんのものは牛と馬は同じだけども…)。
ただ、私なんぞは、柳朝の良さがまだ判りません。ちょっと、淡白に感じるんですよね。

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2008.11.03

古今亭志ん朝15

古今亭志ん朝=ソニー 「付き馬」「三年目」
ここ二週間程、この「付き馬」を聴きながら床に入ったのだが、いつも大門を出る所で寝入ってしまう。それというのも、志ん朝の声がリズムが本当に心地良いのだ。マクラから始まって、冒頭、店の若い衆が客に登楼を勧めるところなんざ、まさにコロラトゥーラです。どこかで、志の輔が志ん朝の落語は気持ちいいのだ、と言っていたが、その点、大いに同感です。そして、榎本滋民氏が『志ん朝落語』で言及している、客が階段を上る時に発する若い衆の“お上ァんなるよう!”という言葉の面喰った上ずり方がこのうえなく可笑しい。このようにして、結果、何日も同じ所を繰り返し聴く羽目に陥ったのだが、それが全く苦にならない。何度聴いても楽しい、何度でも聴きたい。しかし、そうしていては、サゲまでは辿り着かないので、幸い、ソニーの落語CDには、インデックスが付いているから、それを利用して、ようやく最後まで聴き終えることができた。まぁ、全編、志ん朝の歌なんだけど、これも榎本氏が仰っているが、湯豆腐屋で酒を飲んだときの、まさに酒飲みには堪らないセリフを初めとして、絶妙のセリフが満載。いつか、志ん五の「付き馬」のところで、志ん朝の「付き馬」を洒脱だと書いたけれど、確かに洒脱だけれど、それだけじゃないんですね(今迄、何を聴いていたのだろう…)。
榎本氏によると、志ん朝のものは、基本的に志ん生のものを踏襲していて、その志ん生と圓生は、初代の柳家小せんを継承しているという。そこで、『名人名演落語全集(第四巻)』で、その小せんの「付き馬」を読んでみたが、なるほど、今の型と殆ど同じだ。客が登楼して、台の物などを頼む時、ビールも注文するのが面白い。してみると雲助が、“神谷バー”の名前を自身の高座で出していたが、まんざら雲助の趣味とばかり言い切れないかもしれない。ありそうな話ではある。また、浅草のおもちゃ屋の、クルクルと回して行き先を表示するのが最後に“おしまい”となるオモチャは、雲助も演っていた。
ところで、志ん朝がマクラで言っている、“艶やかなお二人”というのは誰だろう? 1977年6月22日、三百人劇場での会で、志ん朝の高座の前に上がったのは誰だろうか? 知りたいものだ。

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2008.05.31

野口雨情・西條八十の世界

近藤志げる=オーマガトキ
寄席(といっても、新宿末広亭が殆どだが)で時折に聴く近藤志げるの唄はなんともいえない魅力があって、涙を誘われる。その志げるがCDを出したというので、早くから聴きたいと思っていたが、ようやく聴くことができた。実は、ネット上で部分的に視聴したことがあるのだが、なんとなく物足らないものを感じていた。そして、CD全体を聴いてみて、その感を益々強くした。寄席で聴く志げるの唄にはルサンチマンがあり、パフォーマンスには毒気があるのだが、このCDに聴く唄は、すっかり漂白されてしまっている。声も生硬で、妙に歯切れがよくって、突き抜けた声。CDを出した喜びだけが出ているような感じだ。
また、パフォーマンスにしても、寄席でよく聴くのは、「シャボン玉」の“屋根まで飛んだ”という歌詞に対して、客席の少年が“おじちゃん、この唄は台風の歌かい?”と訊いたというものがあるのだが、このCDでは、「七つの子」の“かわいい七つの子”という歌詞に対して、やはり客席の少年が“おじちゃん、カラスは七羽も雛を産まないよ”と指摘した、ということになっている。同じような状況なのだが、寄席では、この少年を毒づいている。しかし、CDでは、少年に対してなんとも温和な志げるなのだ。
寄席での、“森繁久彌が今日、午後5時30分にに皆に見守られながら、…夕食を食べた”という冒頭のツカミ、客席へのやや高圧的な態度、叙情性とルサンチマンとがタップリの唄は、本当に魅力的なのだが。
近藤志げるは新宿末広亭に限る、というところか。

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2008.05.11

十代目金原亭馬生十八番名演集(続)

金原亭馬生=コロムビア
先に出た十枚組みの続編。全七枚で、BOXセットも販売されているが、今回は特典盤も無いので単品を七枚一度に購入。BOXセットだと解説が一冊にまとまっており、一枚のCDのケースに収められているのは、ペラのジャケットの表紙だけなので、ケースを開閉するときにこのペラがケースからはみ出たりして、煩わしいということもあり単品で買った次第。演目的には、今回のシリーズは、既に所有している演目も少なからずあるのだけれど、前シリーズのところで切望していた「そば清」も今シリーズで収録されており、もうこの際、全巻購入して全巻統一ジャケットで揃えました。
まだ全部を聴いてはいないけれど、「あくび指南」、これは最高ですね。「あくび指南」は、保田さんの解説によると、前シリーズの五巻と今シリーズの十二巻、そして、『ビバ!江戸』シリーズに収録されているとのことで、早速、聴き比べてみたのだが、今回のシリーズに収められたこの「あくび指南」が、時間的にも一番長く、マクラもタップリ語られている。志ん生から聞いた名人橘家圓喬の話、耳かき、猫の蚤取り、釣指南所。ちなみに、前シリーズのものは、時間的にも一番短く、そのせいか、マクラも釣指南所のみ。『ビバ!江戸』のものは、耳かき、猫の蚤取り。本題は、前シリーズのものが、湯屋での欠伸が無かったが、内容的にはほぼ同じ。ほぼ同じだが、微妙に違う所もあり、それを聴く楽しみもある。例えば、『ビバ!江戸』では、舟を舫っている場所が首尾の松(この言葉も、『江戸吉原図聚』を読んだお陰で直ぐに判るのだが)と言及されている。そして、今シリーズでは、あくび指南所へ行くから付き合えよと誘われた源さんが、くだらないことに付き合えないと言うと、誘った熊さんが、世の中はくだらないことばかりなんだと言う箇所があるのだが、“くだらないことを一生懸命演るのが落語だよ”と師匠が言っていたという雲助の言葉を思い出す。また、前シリーズでは、最後に待ちくたびれた源さんは、“教える方も教える方だが、教わる方も教わる方だ”と言っている。他の二種では、“銭を取って教える方は仕様が無いけれども、あんなもの金を出して教わっている”と言っている。
このように、三種微妙に違うのだが、噺の面白さはどれをとってもいずれも遜色は無い。しかし、ここはやはり時間的にもたっぷりと演じられていて、マクラも堪能できる今シリーズの「あくび指南」を十撰に挙げておこう。とにかく、落語の面白さを凝縮した一枚と言えよう。だって、欠伸が本当にポアっと出るんですよね、このCDを聴くと。
白酒が、「あくび指南」を演った時に、志ん朝から、“お前の師匠に教わったんだろう。うちの兄貴もそういう風に演っていたよ”と嬉しそうに笑いながら言っていた、ということを想い出話として述べている。そんな話を聞くと、なんだか嬉しくって可笑しくって哀しくって涙が出そうです。

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2008.04.13

昭和戦前面白落語全集(東京篇15)

古今亭志ん生=エニー 「亭主関白」他
このCDのタイトルを図書館の新着案内に見つけた時には、欣喜雀躍、拳を硬く握り締め何度もガッツポーズを繰り返した。到底、聴くことはできないだろうと諦めていただけに喜びもひとしおと言うものだ。収録されている演目は、次の通り。
 ①亭主関白②元帳③姉さんの合戦④我慢灸⑤ラブレター⑥夕立勘五郎
 ⑦算術⑧氏子中⑨味噌蔵⑩稽古屋⑪與太郎(計72分)
全部、『志ん生全席 落語事典』に詳しく載っているから、それを読んでもらえばいいのだけれど、簡単に説明しておくと、①②は、所謂「替り目」の前半部分で、題名が違うだけで内容は同じ。③は、「浮世床」の姉川の合戦の部分。④は「強情灸」。⑤は、別名「女給の文」。⑥これを聴きたかったのです。志ん生のナマリのある浪曲の面白いこと!⑦「長屋の算術」ともいう。教養のない店子に大家が算術を教えるという噺。⑧現在所謂「町内の若い衆」。⑨“六分あまりでサゲまでやっている”(保田氏)。⑩濡れた草履を乾す所まで。⑪「金明竹」の前半。
音質は、⑪が雑音がかなりあるが、他は雑音も小さく鮮明に聴くことができる。みんな短くって、それが残念ですが、若々しい志ん生を聴くことができて満足です。

ところで、志ん輔が「夕立勘五郎」をポニーキャニオンから出すという予告が以前にあったような気がしたけど、あれはどうなったんでしょうかね?

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2008.04.06

落語教養高座江戸大百科9

柳家小三治=キング 「時そば」
この「時そば」、存在は知ってはいたが、ソニーでも出てるし手に取ろうとしなかった。しかし、他に目ぼしいものもなかったので借りてみた。聴いてみてビックリ!その速い事!とくに蕎麦屋を騙した男の語り(騙り)の速い事!後から発した言葉が前に発した言葉を追い越そうとするのだから。以前に小三治の「千早振る」に関して、それがカルロス・クライバーを聴くような爽快感があるというようなことを記したが、その比ではない。暫く前にNHKで放映されたパーヴォ・ヤルヴィが指揮したベートーヴェンのようなのだ。疾風怒濤。精気溌剌。
そして、昭和53年録音のこの盤からおよそ15年後の録音となるソニー盤も改めて聴いてみたのだが、やはりキング盤は随分と速い。ソニー盤は聴いていても違和感も全くない通常の速さなのだが、キング盤はとにかく速い。55年録音のグールドの「ゴルトベルク変奏曲」を聴くかのようでもある。そして、ソニー盤に聴くことができる声の錆び(これは否定的な意味ではない)が、キング盤では全く感じられない。現在も聴くことができるこの錆がこのキング盤では全くなくって、ピュアな声質なのだ。そういう意味でも、このキング盤は、小三治が好きな人には、ひとつのメルクマールともなる一枚かもしれない。ま、これは、古くからの小三治ファンには私如きが言わずともよいようなことかもしれません。
しかし、難儀なことに、速いから爽快だから、そっちのほうが面白いかというと、そうでもないんですよねぇ、これが。ほんとに厄介です。
因みに、他に八代三笑亭可楽の「うどん屋」を収録。

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2008.03.30

古今亭志ん生ベスト・コレクション

古今亭志ん生=クラウン 「穴どろ」「おもと違い」
「おもと違い」という噺は、聴く前は「元犬」の別名かと思っていた。違うんですねぇ。詳細は、『落語事典』などに譲るとして、万年青(おもと)と娘の名前おもととを混同したことからくる一騒動という一席。まぁ、噺自体は、たいしたこともない噺だけど、やはり、これも貴重な噺。他には、CDでは出ていないんではないだろうか。『志ん生全席落語事典』で、調べてみたら、やはり、これにも記載されていない。
以前にも書いたが、このシリーズは、貴重な噺が幾つもある。確かに、聴いてみると、どうってこともない噺だったりもするのだけど、しかし、ファンとしては、なんとなく落ち着かない。だから、結局、シリーズ全巻を収集しました。『志ん生全席落語事典』の補遺として以下に演目を記しておこう。なお、このシリーズ、各巻に通しの番号は振られていないので便宜的に商品番号の末尾を振っておきます。
 CD01=「女学校操競孝女おゑんの伝」
 CD02=「茶金」「雨の将棋」
 CD03=「らくだ」
 CD04=「三軒長屋(上)」「後生鰻」
 CD05=「黄金餅」「へっつい幽霊」
 CD06=「もう半分」「水屋の富」
 CD07=「芝浜」「姫かたり」
 CD08=「坊主の遊び」「星野屋」
 CD09=「毛氈芝居」「牡丹灯籠(序)」
 CD10=「お初徳兵衛」「風呂敷」
 CD11=「宗珉の滝」「松山鏡」
 CD12=「早桶屋」「義眼」
 CD13=「穴どろ」「おもと違い」
 CD14=「藁人形」「元犬」
 CD15=「唐茄子屋政談(上)(下)」
 CD16=「お直し」「宮戸川」
 CD17=「品川心中」「権兵衛狸」
 CD18=「鰍沢」「猫の皿」
 CD19=「搗屋幸兵衛」「お化け長屋」
 CD20=「富久」
この中には、『志ん生全席落語事典』の中で、『志ん生復活!落語大全集』(講談社)に唯一収録されているとされている噺が幾つかある。、『志ん生復活!落語大全集』は、値段も高いし、図書館には所蔵されていない。そして、講談社は、他の出版物でも、附録のCDを禁帯出扱いしている。どういう経緯でクラウンのCDが廃盤になったのかは判らないが、こんな傲慢な講談社のものなど手にしようとも思わないので、クラウンのものを、ほかのレコード会社でもいいから、法的にクリアして市販してもらいたいものだ。

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