黒門亭二月第三週
◆会場=落語協会
◆日時=2012年2月18日(土)15:00開演
△柳家花どん 「饅頭恐い」
◇柳家小太郎 「権助提灯」
◇柳家〆治 「ちりとてちん」
◇隅田川馬石 「柳田格之進」(16:00~16:45)
花どん、初めて。なかなかフラがあって面白い。古さを感じさせない、現代感覚の「饅頭恐い」であった。
〆治、“こんなところで、落語を演ってる場合じゃない”と。この高座が終わったら、盛岡へ行き小三治等と合流し、スキー三昧とか。
馬石が、「柳田格之進」を高座に掛けることを知って以来、幾度かの機会を指をくわえて見過ごしてきたが、今日ようやく聴く事ができた。そういう私の期待にも見事に応えてくれた新機軸による名演。マクラで、この噺を演るようになった経緯を語ってくれた。それによると、この噺はもともと持ちネタではなかったが、映画『落語物語』で部分的に演じることになり、結果として、それが好評でもあり、また自分でも演ってみたいという気持ちも出てきた。そこで、師匠雲助に教えを乞うたが、雲助は、“嫌いだから、演らない”とのこと。そして、“お前も、もう真打なんだから、自分で拵えていくということも必要だ”と言われたそうで、それから、自分なりに考えて創り揚げていったそうである。その馬石の「柳田格之進」がこれまでのものと大きく違うのは、娘お絹に、“親子の縁を切ってくれ、そして、私が吉原へ身を売って金を用意するから、どうか切腹は思いとどまってくれ”と言われた柳田が、“切腹もしないし、お前も吉原へはやらぬ”と言って家に伝わる刀を売り五十両を造るという点。これは、馬石自身の人間観を表明したものかもしれない。しかし、私個人の好みとしては、悲惨ではあるけれども、娘(馬生版ははお糸)が、身を売った上に、さらに、病に罹りその姿が老婆のようになるという馬生型が好みなのであるが、現代の多くの人には、馬石のものが受け入れられやすいのかもしれない。
また、問題の金が無くなる月見の場面の描写もなく、湯島で柳田と番頭が再会する場面における、番頭と頭との笑いを呼ぶ会話も無い。さらには、徳兵衛の柳田に対する嫉妬というものも描かれてはいない。この辺は、時間の関係で端折ったのか(とは言っても、正味40分程は演っているのだが)、あるいは、もともと、これらの場面は馬石版には存在せず、源兵衛、徳兵衛の篤い主従関係に比重を置いて創ったのだろうか。この辺は、直接、馬石に訊ねたいところではある。
終演後の、観客の熱い拍手が、馬石の口演が真摯な名演であることを物語っていた。これからも、機会があれば、幾度でも聴きたい馬石の「柳田格之進」であった。
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