十代目金原亭馬生―噺と酒と江戸の粋
石井徹也=小学館
当初、四月発売予定だったが、今月13日に発売された。書店で手にとって見ると、お目当ての一つである馬生の主要演目一覧がただ単に演目名を五十音別に羅列しているだけであったので、落胆し、よっぽど買うのを止めようかと思ったほど。『よってたかって古今亭志ん朝』の演目一覧と比較してみるとその差は歴然。雲助の“寄席のネタ帳は見たんですか?”という問いに、“今回は間に合わなかったんですが、寄席のネタ帳の確認は今後の課題ですね。”と編者は言っているので、まぁ、今後に期待するとしましょう。
また、本全体の構成も『よってたかって~』と類似しているようにも思われるが、例えば、弟子の鼎談にしても、その密度という点に関して、本書には重複する発言も見られたりして、『よってたかって~』の方に軍配が上がると思う。
とは言いつつも、池波志乃さんの証言とか、あるいは、馬生夫人が、“「最後の高座になった東横落語会の『船徳』は、体力的に十分でなく、出来が酷く悪かったから、帰りの車の中で、主人は“悔しい、悔しい”と言っていました」”と仰っていたという岡部さんの証言などは、涙なしには読むことができない。そして、新宿末広亭の席亭・北村さんの章は、席亭がどんなに馬生が好きなのかが実感できる素晴らしい章だ。この章を読むことによって、十二月下席のトリを何故、今松に任せるのかも知ることができるのだ。
しかしながら、馬生夫人は、美人ですね! その夫人との仲睦ましいエピソードももっと知りたいとも思う。
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