古今亭志ん朝15
古今亭志ん朝=ソニー 「付き馬」「三年目」
ここ二週間程、この「付き馬」を聴きながら床に入ったのだが、いつも大門を出る所で寝入ってしまう。それというのも、志ん朝の声がリズムが本当に心地良いのだ。マクラから始まって、冒頭、店の若い衆が客に登楼を勧めるところなんざ、まさにコロラトゥーラです。どこかで、志の輔が志ん朝の落語は気持ちいいのだ、と言っていたが、その点、大いに同感です。そして、榎本滋民氏が『志ん朝落語』で言及している、客が階段を上る時に発する若い衆の“お上ァんなるよう!”という言葉の面喰った上ずり方がこのうえなく可笑しい。このようにして、結果、何日も同じ所を繰り返し聴く羽目に陥ったのだが、それが全く苦にならない。何度聴いても楽しい、何度でも聴きたい。しかし、そうしていては、サゲまでは辿り着かないので、幸い、ソニーの落語CDには、インデックスが付いているから、それを利用して、ようやく最後まで聴き終えることができた。まぁ、全編、志ん朝の歌なんだけど、これも榎本氏が仰っているが、湯豆腐屋で酒を飲んだときの、まさに酒飲みには堪らないセリフを初めとして、絶妙のセリフが満載。いつか、志ん五の「付き馬」のところで、志ん朝の「付き馬」を洒脱だと書いたけれど、確かに洒脱だけれど、それだけじゃないんですね(今迄、何を聴いていたのだろう…)。
榎本氏によると、志ん朝のものは、基本的に志ん生のものを踏襲していて、その志ん生と圓生は、初代の柳家小せんを継承しているという。そこで、『名人名演落語全集(第四巻)』で、その小せんの「付き馬」を読んでみたが、なるほど、今の型と殆ど同じだ。客が登楼して、台の物などを頼む時、ビールも注文するのが面白い。してみると雲助が、“神谷バー”の名前を自身の高座で出していたが、まんざら雲助の趣味とばかり言い切れないかもしれない。ありそうな話ではある。また、浅草のおもちゃ屋の、クルクルと回して行き先を表示するのが最後に“おしまい”となるオモチャは、雲助も演っていた。
ところで、志ん朝がマクラで言っている、“艶やかなお二人”というのは誰だろう? 1977年6月22日、三百人劇場での会で、志ん朝の高座の前に上がったのは誰だろうか? 知りたいものだ。
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コメント
“艶やかなお二人”というのは、音曲の千家松人形・お鯉のお二人だそうです。『志ん朝の落語3』の「付き馬」の項に括弧書きで載っていました。
投稿: 龍 | 2008.11.08 21:59