国立演芸場十月中席
◆会場=国立演芸場
◆日時=2008年10月18日(土)13:00開演
△柳亭市朗 「やかん」
◇桂笑生 「表彰状」
◇ホンキートンク 漫才
◇柳亭左龍 「鹿政談」
◇太田家元九郎 津軽三味線
◇蝶花楼馬楽 「寝床」
仲入
◇宝井琴調 講談
◇三遊亭歌る多 「金明竹」
◇ニューマリオネット あやつり人形
◇五街道雲助 「付き馬」
今席は『儚五十年廓種々(はかなきいそとしくるわのあれこれ)・雲助廓噺』と題してのネタ出し。
笑生は二度目。前回は、もう少しの清新さが欲しいというようなことを書きましたが、しかし、それはまた、今の若い噺家が持っている妙に小奇麗な雰囲気ではなく、なんというか噺家らしい臭いを持っているようで、それが私は好きでもあるんです。演目はロビーに掲出されていたものを見て知りましたが、泥棒が表彰状を貰うというもので、ネットで調べてみたら大野桂さんの新作落語らしい。
ホンキートンク、初めて。芸名の意味は安酒場という意味らしいですね。愛知出身の方は、中日の谷繁を一回り若くしたような感じ。
左龍を久し振りに観ましたが、さらに上手くなっていてビックリしました。高座姿も、落ち着いて堂に入っていました。持ち前の柔らかい雰囲気とも相俟って、心地よく聴くことができました。
元九郎も久し振り。調べたら、およそ二年ぶり。なんと、“ニッポン代表”はありませんでした。青森の民謡について語ってくれました。『弥三郎節』を唄ってくれました。これは嫁いびりの唄だとか。
馬楽は初めて聴く。端正な教科書どおりの「寝床」だと思いました。しかし、これは決して悪い意味ではなく、とても安心して聴けました。前の番頭がカムチャッカ半島に行ったという所でサゲていましたが、ここで下げたら、演目を「素人義太夫」とする向きもあるようだけど、そんなことをしていたら、むやみに演目が増えて私達としても煩雑になってしまうのではないかしら。
琴調、無論初めて。演目(というのかしら?)は、「小仏峠」。鼠小僧の少年の頃の話。張扇の音がとても心地よかった。高座が終わって、前座が片付けていた釈台がホント重そうでした。
歌る多は、最近、高座に自信と余裕が感じられますね。噺を終えて舞ってくれた『カッポレ』のなんと艶っぽいこと!最後の投げキスで私はノックダウンしました。
ニューマリオネット、腰を振る人形は笑えます。今日は、闘牛を初めて観ました。カルメンのスカートの中を見て正体を失った牛は、あれは私ですね。
雲助の「付き馬」、これはもう最高でした。もともと好きな噺ですが、『江戸吉原図聚』を読んでからは、この噺に出てくる言葉も理解できるようになって更に面白さが倍加したように思います。ベラベラと喋り捲る吉原の客に私は呆然としました。これがあの雲助かと。内面と外面との両方の面白さを兼ね備えた名演と思いました。今流行の噺家ばかりをズラッと並べた感のある『この噺家を聴け!』という煽情的なタイトルの本の作者が雲助の滑稽噺は面白くないといっていたけど、そして、実は私もそう思っていたけど、違うんですね。バカ笑いをするのではなく、言ってみれば大江健三郎流の哄笑の落語なんではないのかなと思うのです。雲助落語は。
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