奉納落語会(第一部)
◆会場=全生庵
◆日時=2008年8月10日(日)12:00開演
◇柳亭こみち 「成田小僧」
◇神田茜 「牡丹燈籠・お札はり」
◇三遊亭歌る多 「真景累ヶ淵・豊志賀」
この落語会のチケットが取れたので、初めて圓朝まつりなるものも目にしたのだが、いや、盛況でしたね。前に進めないんですから。例年は、酷暑の中、行なわれていたようですが、今年は幸いにも、曇天で、凌ぎやすくてよかったです。
なお、会の前に八朝から挨拶があり、第一部の応募者は600余人、第二部の応募者は2000余人とのこと。そして、第一部の顔触れは、八朝の好みで選んだと冗談交じりに語っていた。
こみち、会が始まる前に、パフォーマンスで扇遊とあいとしげるという芸名でデュエットしていたが、二人とも上手い事!マクラでこのことに触れ、扇遊から頻繁にカラオケに呼び出され、タップリと練習したと言っていた。「成田小僧」という噺は初めて聴く。若旦那と小僧の深川の不動詣りは夢で、サゲが夢は小僧の疲れというものなのだが、『落語事典』に載っているものとは、ちょっと違う。こみちも言っていたが、軽い噺なので、そう詮索することもないだろう。こみちのお婆さんの可愛らしさを堪能すれば、それで充分です。
茜、初めて。茜が冒頭、これは、お札はがしのパロディだといったので初めて気がついたのだが、題名は、お札はりなんですね。張扇は、冒頭に一度叩いただけだった。張扇の音をもっと聞きたかった。茜によると、今日の出演は、歌る多の推薦によるとのこと。
歌る多、畢生の名演と言いたい。出の時から、その表情は、準決勝前の谷亮子みたいに厳しい表情。黒の着物に、薄い化粧。波乃久里子、藤間紫を髣髴させる雰囲気。マクラもなくすぐに本題へ。その豊志賀の怖いこと!よく落語を聴いて戦慄が走ったという人がいるが、そんなことはないだろうと思っていた。しかし、今日の歌る多の豊志賀は、身体にゾワゾワとしたものが蠢き、鳥肌が立つような感じなのだ。黒木瞳なぞ、その比ではない。また、豊志賀が勘蔵の家で新吉に切々と捨てないでくれと掻き口説く場面は、豊志賀の哀れさに涙を誘われる。高座を終え、袖に下がるときにも、厳しい表情だった。とにかく、笑いを一切挟まない一席だった。
ただ、時間の所為なのかもしれないが、多少、テンポが速いなと感じた。今度、もう一度、じっくりと聴いてみたい。
歌る多は、もう、女流という冠は必要ないのではなかろうか。
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