十代目金原亭馬生十八番名演集(続)
金原亭馬生=コロムビア
先に出た十枚組みの続編。全七枚で、BOXセットも販売されているが、今回は特典盤も無いので単品を七枚一度に購入。BOXセットだと解説が一冊にまとまっており、一枚のCDのケースに収められているのは、ペラのジャケットの表紙だけなので、ケースを開閉するときにこのペラがケースからはみ出たりして、煩わしいということもあり単品で買った次第。演目的には、今回のシリーズは、既に所有している演目も少なからずあるのだけれど、前シリーズのところで切望していた「そば清」も今シリーズで収録されており、もうこの際、全巻購入して全巻統一ジャケットで揃えました。
まだ全部を聴いてはいないけれど、「あくび指南」、これは最高ですね。「あくび指南」は、保田さんの解説によると、前シリーズの五巻と今シリーズの十二巻、そして、『ビバ!江戸』シリーズに収録されているとのことで、早速、聴き比べてみたのだが、今回のシリーズに収められたこの「あくび指南」が、時間的にも一番長く、マクラもタップリ語られている。志ん生から聞いた名人橘家圓喬の話、耳かき、猫の蚤取り、釣指南所。ちなみに、前シリーズのものは、時間的にも一番短く、そのせいか、マクラも釣指南所のみ。『ビバ!江戸』のものは、耳かき、猫の蚤取り。本題は、前シリーズのものが、湯屋での欠伸が無かったが、内容的にはほぼ同じ。ほぼ同じだが、微妙に違う所もあり、それを聴く楽しみもある。例えば、『ビバ!江戸』では、舟を舫っている場所が首尾の松(この言葉も、『江戸吉原図聚』を読んだお陰で直ぐに判るのだが)と言及されている。そして、今シリーズでは、あくび指南所へ行くから付き合えよと誘われた源さんが、くだらないことに付き合えないと言うと、誘った熊さんが、世の中はくだらないことばかりなんだと言う箇所があるのだが、“くだらないことを一生懸命演るのが落語だよ”と師匠が言っていたという雲助の言葉を思い出す。また、前シリーズでは、最後に待ちくたびれた源さんは、“教える方も教える方だが、教わる方も教わる方だ”と言っている。他の二種では、“銭を取って教える方は仕様が無いけれども、あんなもの金を出して教わっている”と言っている。
このように、三種微妙に違うのだが、噺の面白さはどれをとってもいずれも遜色は無い。しかし、ここはやはり時間的にもたっぷりと演じられていて、マクラも堪能できる今シリーズの「あくび指南」を十撰に挙げておこう。とにかく、落語の面白さを凝縮した一枚と言えよう。だって、欠伸が本当にポアっと出るんですよね、このCDを聴くと。
白酒が、「あくび指南」を演った時に、志ん朝から、“お前の師匠に教わったんだろう。うちの兄貴もそういう風に演っていたよ”と嬉しそうに笑いながら言っていた、ということを想い出話として述べている。そんな話を聞くと、なんだか嬉しくって可笑しくって哀しくって涙が出そうです。
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