黒門亭二月第二週
◆会場=落語協会
◆日時=2008年2月9日(土)17:30開演
△春風亭正太郎 「牛ほめ」
◇柳家右太楼 「真田小僧」
◇桂扇生 「持参金」
仲入
◇橘家富蔵 「うどん屋」
◇入船亭扇遊 「寝床」
雪になるという予報を気にしながらも黒門亭へ出掛けてみると、すでに開場していて誰も並んではいなかった。二階へ上ると、30人ほどの人。
正太郎。初めて。正朝の弟子の由。与太郎噺はどうも面白くない。
右太楼は、2005年の3月に一度聴いているようだが、全く記憶にない。今日の高座は、六文銭の謂れのところで多少トチってはいたようだが、最後のオチまでキッチリと演っていた。
扇生は、TVで何度か聴いているのだが、生で聴くのは初めて。TVで観たときも印象が強かったのだが、生で観るとその印象の度合いは更に強い。ハンサムな顔立ちで悪の匂いもする。生で観てますます好きになった。私は今日は調整役だと言って、見事に言ったとおりに、ピッタリ6時30分に高座を終えた。
富蔵は、声がいいですよね。柔らかな感じで。「うどん屋」、佳演。もう少しの酔態があればと思った。
扇遊の「寝床」が、実に素晴らしかった!絶品です。文句なく十撰に入れさせていただきます。マクラで“皆さん、天気予報は聞いてきたんですよね”などと言いながら、なんで、こんな雪も降るかという日にわざわざ落語などを聴きに来るんだろうという話からカラオケの話に入り、カラオケ館で貰ったカードを楽屋で見せると、市馬に“私はこういうのを持っている”と言いつつゴールドカードを見せられたとか、(私も好きな)南なんは大変な音痴だそうで、その音痴振りを話してくれたり、などしてマクラもタップリ。そして、“こんな天気だから早めに終わった方がいいでしょう、手っ取り早くやります”と言って本題に入ったのだが、予定の終了時間が7時30分だから、最後のオチまでは演らないで、蔵の中で義太夫を語り込まれた元の番頭がカムチャッカに逃げたという所で終わりかと思ったら、とんでもない、義太夫よろしくミッチリと最後のオチまで演ってくれました。終わったのは7時45分。生意気な言い方かもしれませんが、「寝床」には、いささか食傷していたのですが、今日は本当に腹の底から笑わせて貰いました。例えば、一度はヘソをまげて“もう今日は語らない”と言った旦那が、番頭に宥められて“しかし、長屋の連中も本当に好きだねぇ”と言うセリフは、もう私も何度も聴いてはいるのだけれど、その扇遊の、このセリフが出るまでの番頭との遣り取りの表情、間のなんと絶妙な事!小三治よりも上手いかもしれない。そして何より噺全体のテンポの良さ!小三治にはもうこのテンポは望めないだろう。
帰るときには、冷たい雨が降っていた。躊躇しながらも思い切って行ったのは正解だった。わずか千円で、こんな名演を聴けたのだから。
| 固定リンク
コメント