ビクター落語八代目林家正蔵(1)
林家正蔵=ビクター 「中村仲蔵」「火事息子」「一眼国」
草柳さんが本の中で、このCDの「中村仲蔵」について、“八代目林家正蔵(彦六)が得意にしていた。CDも数種出ているがまだ勢いのある時代のものを挙げる。物真似されておなじみの晩年の口調しか知らない人にとっては驚きの語りだろう。”と紹介しているが、このことがより顕著なのはむしろ「火事息子」の方であろう。その若々しさ、滑舌の良さ、テンポの良さ。本当に驚きである。マクラで、いろは四十八組のなかに無いものとして、へ組(屁)、ひ組(火)、そして、ら組を挙げて、ら組が無い理由として江戸っ子は“ら”とうまく発音できなかったこと、ま組のあとにら組があっちゃやはりまずいということを挙げて説明しているのだが、そのクスグリもスムーズにリズミカルに出てくるので、すっと耳に入りやすく直ぐに笑いの反応が起こるのだ。しかし、草柳さんは落語ファンの購買意欲をくすぐるツボを熟知していますね。それからおよそ10年後の録音になる「一眼国」、これは我々がよく耳にする晩年のものだろうが、しかし、これもまた面白いのだ。見世物小屋をスケッチするマクラの部分が、時折、坂本冬美のような裏返る一歩手前の声も出てくるが、晩年の渋い声にマッチして雰囲気も満点。まさにその見世物小屋の前で入ろうか入るまいか逡巡している私自身がいる。それから、鬼娘として適役なのはその容貌からして立川談志が最適だと言っているのだが、これは当時、談志の共産党議員への野次をめぐって二人がしょっちゅう喧嘩していたということが原因か。また、本題で、一つ目達が原っぱの中から次々に出てくる様を、ぴょこぴょこと表現しているのが可愛らしくも可笑しい。
このCD、正蔵を聴くときには必聴の一枚かもしれない。
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