アイとラクゴ(第22回)
◎隅田川馬石真打昇進襲名披露
◆会場=日暮里サニーホール
◆日時=2007年5月18日(金)19:00開演
◇古今亭志ん公 「つる」
◇桃月庵白酒 「氏子中」
◇五街道雲助 「新版三十石」
仲入
◇口上=志ん公(司会)、駿菊、馬石、雲助、白酒
◇古今亭駿菊 「近江八景」
◇隅田川馬石 「中村仲蔵」[~21:12]
この会場は初めて。同じフロアーの別の会場では何か踊り(?)みたいなものが催される様子で、既に受け付けもキッチリと用意されて、その係りの人も3、4人が待機している。こちらの方は誰一人居ない。まぁ、らしいと言えばらしいか。椅子も若干硬くて長時間座っていると尻が痛くなるが、千円と言う値段を考えれば、それは贅沢というものだ。なにしろ、黒門亭と同じ値段なのだから。
志ん公、初めて。隠居の部屋につるの掛け軸が掛かっている型。この型も初めて。
白酒の「氏子中」も今日のお目当て。白酒によると、この会は勉強会という趣旨なのだそうで、こういう珍しい噺を掛けるそうです。この演題は、CDではコロムビアから出ている『談志が選んだ艶噺し』のシリーズのなかで立川談四楼演でリリースされているのだが、これは看板に偽りアリである。「氏子中」と言いながら、中身は「町内の若い衆」である。しかし、このCD、解説ではどうも「氏子中」の解説をしているようなのだが(胞衣とか、氏子などという言葉が出てくる)、あるいは音源を入れ間違えているのかもしれない。ともあれ、そういうことで、今日の白酒の高座は大変貴重なものだった。テンポも良く、与太郎の演出も良かったのだが、ただ、胞衣と氏子の説明がないとやはり判りにくいと思った。
雲助の「新版三十石」は、先日、インターネット落語会で拝見していたのだが、今日、それを生で聴くことができるとは思ってもいなかった(雲助の演題はお楽しみということだったので)。その面白いこと!私も大いに笑ったのだが、後ろの席の人達などは、それこそ本当にヒーヒー言って笑っていた。生の醍醐味です。
口上での駿菊の話によると、馬石が噺家になる前に通ったのはキャナリー落語教室だそうだ。その存在を初めて知りました。また、馬石はこの披露興行を通じて師匠達の息遣いを楽屋や客席ではなく、口上の舞台に並んで肌で感じることが出来たのが貴重な体験であり財産となるというようなことを言っていた。三本締めは雲助。“イヨーッ”というのは“祝おう”という意味もあるとか。これも初めて知りました。
駿菊の「近江八景」も今日のお目当て。これも圓生のCDがあるだけでは。駿菊のは圓生のよりもハイテンポで気持ちよく聴けた。そして、マクラで膳所の説明もしっかりとしていたので、サゲも大変に判りやすかった。しかし、兄貴分が言うところの、弟分の顔を見ると“梅雨時の公衆便所に裸足で入ったような心持ち”になるというセリフには笑いました。この噺に専心していたそうで、そうだろうと思われる高座でした。
馬石の「中村仲蔵」、これも今日のお目当て。蕎麦屋での浪人との遣り取り、弁当はもういらないというサゲ、どちらも師匠雲助の型に則った高座。馬石の高座は、無言で表情のみで語られる時間がかなりあると思う。この時間を過剰だと思うか、それとも一つの無言歌だと思うか、評価の分かれるところかもしれない。私自身、時としてそれが過剰に思えるときもあるけれども、しかし、マクラで馬石自身が、“硬い、入れ込みすぎという批判も承知しているがそれも発展途上のことと理解して貰いたい”というようなことを言っているので、私もそう思いたい。そして、これまで本流とされてきた言葉だけで演じられる落語とは違う、落語と芝居とを統合したような新しい型を創っていって欲しいと思う。
前回、白酒のこの会での真打昇進披露でも、馬石は主役の白酒(演目「猫と金魚」)を差し置いて、トリでみっちりと「富久」を演ったそうだ。
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