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2007.04.07

さん喬を聴く会(VOL.95)

◆会場=深川江戸資料館(小劇場)
◆日時=2007年4月7日(土)18:00開演
  ◇口上=喬之助、さん喬
  ◇柳家さん若 「つる」
  ◇柳家喬之助 「錦の袈裟」
  ◇柳家さん喬 「寝床」
 仲入
  ◇柳家さん喬 「ちきり伊勢屋」[19:52~21:01]

今までこの会、別に並ぶこともなく三々五々ロビーに待機していたのですが、客が増えていよいよ収拾がつかなくなったか、今日はすでに多くの人が階段に並んでいました。並びながら眺めていると、さん喬は女性ファンが多いのですね。六、七割は女性ではないでしょうか。いや、もっとかな?
いきなり、口上から始まりました。口上といっても、そんな大袈裟なものではなく、さん喬と喬之助二人っきり。正式の一門の真打昇進披露は、6月2日に行なうそうです。もう、師匠も入れて11人の大所帯なんですね。一大派閥です。さん喬はその一番下の小んぶもが真打になるのを見届けたいと言っていました。
さん若はもう結構な年だそうですがまだ独り者だそうです。ところが秋田にいるお父さんは二度目の嫁さんをもらったとか。その嫁さん、さん若とたいして年も違わず、さん若の妹となる娘さんも生まれたそうです。「つる」はお目出度い噺なのに、なんだか悲壮感が漂っていました。しかし、基本的に私は、落語家の身内の話を聞きたいとは思いません。
『東京かわら版』の今月号での喬之助のインタビュー記事を読むと、かなり几帳面な性格な様子。今日の高座にもそうと感じられました。丁寧に噺を追っているけれど、それがいっこうに弾まない。もっと笑いが起こってもよい噺なのにフフという声は起こっても弾けない。与太郎もなんだか子供じみていました。嫁さんもいるのだから、ちょっと違うんじゃないかなと思います。
さん喬「寝床」、初めて聴きました。実に面白かったですね。今、ポニーキャニオンで進められているシリーズにも是非この演目もリリースして欲しいと思いました。私にとって、長屋の煎餅屋さんは初めて聴く登場人物です。そして、重蔵に“お前は悪い所はないのか?”と聞く前の旦那と重蔵との無言の遣り取り。こういうところが、たまらないですよね!そして、店立てを言われたあと長屋の者達を従えて番頭が旦那に是非、義太夫を語ってくれと言っても旦那が拒むと番頭はすぐに“そうですか”と言って引き下がろうとする。すると旦那はあわてて、“そういう時は、そうではございましょうがと言ってもう一押しするものだろう”というようなことを言うのだが、こういう演出も初めて聴きました。とにかくそのディテールが楽しい高座でした。出囃子は、太田そのさんに頼んで浄瑠璃に関わるものを弾いてもらったそうです。
「ちきり伊勢屋」は、圓生百席に収録されている圓生口演のものが時間にしておよそ140分。今日のさん喬の高座がおよそ70分。その時間の制約を全く感じさせない引き締まった素晴らしい高座でした。噺の筋、登場人物が的確に確実に頭に入りました。圓生のを聴いているとややもすると意識が散漫になり、それらが頭に残らない嫌いがありました。だからといって、さん喬の高座が、単に粗筋だけを追っているものではなく、伝次郎の諦念、悲哀、思慕などがメリハリをつけて演じられていました。ちょうど、ベートーヴェンの交響曲をリスト編曲のピアノ版で聴いたようにその骨格が見事に浮かび上がってくるような類のものでした。先頃、三回にわたって口演された落語研究会での「ちきり伊勢屋」が、どのようなものだったか判りませんが、今日のようなスタイルでこれからも時々に高座にかけて欲しいものです。ところで、この噺の途中、伝次郎が待乳山聖天に登り向島、浅草、筑波を眺めやる場面があるのですが、私、先日、本所吾妻橋から浅草界隈を散策していたためにこの場面がとても臨場感をもって聴くことができました。これまで、電車で点として訪れていては判らないものが、歩くことで面として落語の舞台が感じられるのでした。ともあれ、今日のお目当ての「ちきり伊勢屋」、本当に素晴らしい内容でした。

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