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2007.03.21

鈴本演芸場三月下席

◎真打昇進襲名披露興行
◆会場=鈴本演芸場
◆日時=2007年3月21日(水)17:20開演
  ◇鏡味仙三郎社中 太神楽曲芸
  ◇春風亭一朝 「初天神」
  ◇五街道雲助 「ざる屋」
  ◇柳家権太楼 「ジャンバラヤ」
  ◇昭和のいる・こいる 漫才
  ◇古今亭圓菊 「粗忽の釘」
  ◇柳家さん喬 「替り目」
  ◇鈴々舎馬風 漫談
 仲入
  ◇口上(さん喬、正蔵、馬石、雲助、圓菊、馬風)
  ◇ニューマリオネット 糸操り
  ◇林家正蔵 「鼓ヶ滝」
  ◇林家正楽 紙切(相合傘、夜桜、入学式、丹頂鶴)
  ◇隅田川馬石 「幾代餅」[20:33~21:07]

立ち見も出る盛況。開場前に、馬石の奥さんが喬之助と前売券の受け渡しをやっていた。私の席の後方は、三人組のオバサマ。のべつ喋り捲っている。右隣には、テーブルに缶ビールを並べている二人組のオジサマ。悪い予感。
前座はなく仙三郎仙三仙花。仙三郎が、いつもの“私が寄席の吉右衛門です”といっても客席は何の反応もなかった。吉右衛門を知らないのか、それとも毎度おなじみのセリフだからか。
一朝、マクラはいつもの先代正蔵の、餅の黴、足の痛み、アーモンドチョコ。
雲助、景気のいい噺を。
権太楼、マクラはCDの「寝床」とほとんど同じ。最近、権太楼、マクラで故文朝の“マッカーサー”をよくやるのだけれど、どういう意図でやっているのだろうか?
のいる・こいる、相変わらず可笑しいです。
圓菊、不明瞭な所が多々あり、聴き辛い。
さん喬、客席をほぐして、軽く一席。
馬風は、いつもの漫談。
口上。さん喬の司会で始まったが実に良い口上だった。正蔵は二年前の自身の襲名披露興行のことから、前座で入った馬石を見てイケメンな前座だと思ったと。圓菊は、なにかしら危なっかしく、馬石の名も思い出せない様子で、雲助に助け舟を出してもらっていた。しかし、雲助が、馬石の名を襲名することについて、圓菊に挨拶に行き、そして美濃部美津子さんに許しを貰いに行った時のことなどを語っているときには、好々爺たる穏やかな笑顔を浮かべながら、雲助の顔をずっと見つめていた。全て許せると思いました。馬風の口上は、会長らしい立派なものだった。通常は、ここで三本締めになるのだが、なんと、さん喬の説明によると、真打に昇進したのだから何か話したいだろう、ということで会長馬風の大英断によって今回から新真打にも挨拶をさせることになったという。五街道一門会で白酒が新趣向があると言っていたのはこれだったのか。それは、願ってもないことで以前から私も新真打の言葉が欲しいなと思っていたものだ。そして、馬石の挨拶。これが本当に良かった。“感無量です!地位を、名を辱めないよう頑張ります!”という趣旨のものだった。さん喬が正蔵に“簡潔だけど思いがこもったいい挨拶だったね”と言っていたが、二人ともに泣いていた。私も泣いた。最後は馬風の三本締め。
ニューマリオネット。初めて見ました。獅子舞でしたが、中には人がちゃんと二人入っていました。実に見事でした。惜しむらくは、客席からは人形の位置が低いかなと思いました。そして、芸が終わって、旦那さんが袖に引っ込んだ後に遅れてつつましやかに袖に下がる奥さん。いいですね。
正蔵。聴くのは久し振り。マクラで話した、襲名披露興行のパレードの折、仲良くなったホームレスの人達が横断幕を持って声援してくれたという話には真偽の程はさて置いて、泣けました。
馬石。実に素晴らしい高座だった!周囲の人達に助けられて高嶺の花の幾代太夫に会うことができた清蔵の感謝の気持ちと、真打に昇進できた馬石の感謝の気持ちとがまさに同一のものとなってその高座に体現されていた。緩急、硬軟、強弱、まさに自由自在の高座でした。私の周りの人達もあちこちでハンカチを手にしていました。結城昌治さんの『志ん生一代』によると志ん生が、金原亭馬きんで真打になって上野鈴本で真打昇進披露をやったその初日に「淀五郎」をかけたそうなので、あるいは、馬石も、時間的にどうかなと思いながらも、「淀五郎」をやるのではと期待しましたが(そのための一門会での予行演習かなとも勘ぐったのです)、結果として「幾代餅」を聴けて本当に良かった。馬石希うところの客の心に届く高座でした。噺の終盤、相変わらずの携帯電話が二度ほど鳴ったが、それにも動ぜず見事に演じきりました。途中、親方が“親方”と言ったようにも思いましたが、ないも同然のキズです。なお、幾代太夫が年が明けて清蔵を迎えに来た日は3月21日でした。
後方のオバサマ達は、馬石の高座中はビニール袋を少しガサゴソといわせていただけで、おとなしく聴いていて終わった後は“良かったわね”と言っていました。
終演後、出口で馬石の金太郎飴を配っていました。もし、奥様自ら配っていたら、それこそ幾代飴だなと思ったりもしました。

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今興行における新真打の演目
 21日=馬石「幾代餅」
 22日=菊志ん「権助提灯」
 23日=喬之助「錦の袈裟」
 24日=柳朝「明烏」
 25日=我太楼「幇間腹」
 26日=馬石「妾馬」
 27日=喬之助「茶の湯」
 28日=柳朝「井戸の茶碗」
 29日=我太楼「転宅」
 30日=菊志ん「小言幸兵衛」
一朝師匠の口上が評判いいようなので末広亭で拝見したいものだ。

投稿: | 2007.03.31 12:54

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