黒門亭三月第一週
◆会場=落語協会
◆日時=2007年3月3日(土)14:00開演
△柳亭市丸 「子ほめ」
◇柳亭こみち 「たらちね」
◇むかし家今松 「風の神送り」
仲入
◇翁家さん馬 「薮入り」+南京玉簾
◇柳家三三 「三味線栗毛」
今日の黒門亭、定員40人の所を膝送りして50人入れ、満員札止め。やはり、皆さん、三三がお目当てか。私も、三三の「三味線栗毛」をお目当てに来たのだが、二つ目に昇進したこみちも聴きたかったので足を運んだ次第。
前座は市丸。市馬の弟子らしい。会場前から、金八と一緒に幟の準備などもしていた。金八はボランティアでお手伝いだそうだが、とてもよく働いていました。さて、市丸の「子ほめ」。ちょっと、急ぎすぎていて言葉が連なって出てくるので、やや不明瞭になる嫌いがある。50代の人には45、6と言えという所の45、6と言う順番を間違えたように思ったが。しかし、後から上がったこみちに天才的と褒められていました。そのこみち、褒めた後、座布団が真直ぐになっていないと言って、こういう所に噺家の了見が出ると言いながら自ら直す。そして、熱演した市丸が垂らした汗をも拭く。こみちの高座が終わり、市丸が次のさん馬が上がる前の高座返しを首をひねりながらやると、客席から笑いが起こり、“真直ぐなってるよ!”との暖かい声も飛んだ。市丸さん、これは、こみちの厭味でも嫌がらせでもないと思いますよ。こみちの高座返しを寄席でも国立の小劇場でも幾度となく観てきたが、それは本当に丁寧だった。寸分も狂わないようにとの気迫が滲み出ていた。市丸さん、そう思って頑張ってください。
二つ目になったこみちを早く聴きたいと思っていたが、ようやく念願が叶う。渋めの着物で落ち着きも感じられる。小三治を慕う噺家達が催すスキーツアーに二週間ほど行って来て初めての高座らしい。そのことをマクラに振ってから本題に入る。噺は上手いし安心して聴ける。これも三三の薫陶の賜物か。千代女が三つ指をついて丁寧な言葉で話す時などは、膝送りをしてますます高座に近づいて聴いているものだから、まるで、私に話しかけているような気分になりました。夏の暑いさなかに半蔵門の駅から大きなカバンを引きずりながら国立小劇場まで汗を拭き拭き駆けていたあの苦労が報われて本当に良かったなと思います。そういえば、化粧も前座の頃とは印象が少し違うような気がしましたが。
今松の「風の神送り」は、以前一度聴いたことがあるのでやや残念。この噺、嫌いではないんだけれども、聴いていて、途中ダレてくるんですよね。
さん馬は、初めて聴く。こういうことを書くのは、失礼かとも思うが、歯の調子があまり良くないみたいで、言葉が不明晰。声は大きい。ちょっと古いタイプの噺家さんと感じた。しかし、噺が終わってから披露した特技の南京玉簾は、客席の手拍子もあり、喝采を受けていた。林家ぼたんが自身のHPで余技として玉すだれと書いていたが、さん馬に習っているのだろうか?絶やさないでほしい芸だと思う。
三三、これまで何回か聴いたときと雰囲気が違う。自信というか、傲岸と言ってもいいくらいのものを感じた。いつだったか、同じ黒門亭で、三三の出番はなかったのだが、よく足を運ぶらしい年配の女性が“アタシ、三三、嫌いなのよ。威張っているから”と喋っていて、私は“そんなことはないだろう?”と思ったものだが、今日感じる印象は“そういう所もあるのかな”と思えるものだった。マクラは、最近あった、客が携帯で噺終了間際の三三の高座を撮った時に、その客に注意をしたことについての釈明(その模様は、インターネット落語会でも配信されたらしいが、残念ながら私は見ていない)。そして、例の士農工商の身分制度から、噺家たる川柳川柳はドブを這っていたと。その語り口が、上記したことを感じさせる語り口なんですよね。芸道を極める意識の強さの表れとも言えなくもないのかもしれませんが。しかし、噺の方は、やはり上手かった。相変わらずの食いつかれるかのような迫力もありましたし。そして、初めての「三味線栗毛」を三三で聴けて満足しています。『落語事典』によると、この噺、別名「錦木」ともいうそうだが、サゲは、今日、三三が噺のはじめに言っていた馬に付けた三味線栗毛という名に関するものとしているが、三三のサゲは金魚と検校とを掛けたものだった。また、『落語事典』では、按摩の錦木は死なないで検校となるが、三三の噺では、錦木は死んでから検校の位を授かる。三三の噺は誰から教わったのだろう。
今日は三月三日の雛祭りということで、三三は出演の依頼を受けたそうです。そして、演目も三に因んで選んだそうです。
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コメント
三三が自身のブログで、
繁盛亭の高座から写メールしたと報告しているが
自分が、それをされたら怒り、
自分は、はしゃいでそれをやる。
いいのかな。
投稿: 龍 | 2007.03.10 08:36
三三師匠には私も傲慢な怖さを感じます。芸には期待していますが、人として接するのはちょと控えたい気が…。身近な人にはまた違うのかもしれませんが。
投稿: r | 2007.03.15 05:16
r様、コメント有難うございます。
しかし、若い時はそれくらいの方がいいのかもしれないですね。催す会の会場もstep upしているようですしね。“芸は人なり”という言葉も老境に入ってこそいえる言葉なのかもしれません。ただ、私は、どちらかというと私小説が好きなものですから。
投稿: 龍→r | 2007.03.15 22:14
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/entertainment/stage/51439
国分太一は三三師匠の「弟子」になるんですかね(笑)。
投稿: r | 2007.05.13 04:32
恐らく三三師匠の厳しい教えの賜物なんでしょうね。
映画も早く観てみたいが、DVDがリリースされるまで待つとしましょう。
投稿: 龍→r | 2007.05.13 18:12