名人 志ん生、そして志ん朝
小林信彦=文春文庫
再読。2003年に朝日選書から出版されたものを読んでいたのだが、ほとんど覚えていなかった。しかし、読み進むと、この本を読んでから足繁く寄席に通うようになったことが思い出される。志ん朝を亡くした著者の喪失感が私にも伝わり、今、小三治を聴いておかないと、という衝動にかられたのだ。そして、そのお陰で、文朝を、さん喬を、雲助を識ることが出来た。
志ん朝の「寝床」について、現在、CDで出ているものは文楽型だが、TBSで放映されたものは、抱腹絶倒の志ん生型で、このほうが私は好きだ、という著者の言及について、<落語の蔵>のブログに松本尚久さんが、このことを指摘し、これからはジャズのように落語も別テイクを楽しむということがあってもいいのではないかというようなことを言っているのだが、なるほどと思った。この「寝床」、そして「中村仲蔵」、是非、聴いて、観たいものだ。
聴きたかった高座といえば、1981年4月の紀伊國屋寄席での馬生の「ずっこけ」。馬生が亡くなる前の年だが、“あれはすごかった”“打ちのめされた”と著者が激賞している。その馬生が若い頃からつけていた日記があったそうで、“本人の希望で”夫人が読まずに焼却したそうだが、これなどは一ファンとしては読みたかったし、存在すれば資料的価値は相当なものとなっただろう。
そういうわけでありまして、この本、再読した価値のある本でした。
そうそう、第四章<落語・言葉・漱石>を読んで『吾輩は猫である』も当時再読したことをも思い出しました。そして、『SWITCH』(1994年1月号)を捜し求めて叶わなかったことも。
『三人噺』もまた読みたくなった。
| 固定リンク
「BOOK」カテゴリの記事
- 昭和の爆笑王 三遊亭歌笑(2010.06.01)
- 十代目金原亭馬生―噺と酒と江戸の粋(2010.05.16)
- 生きてみよ、ツマラナイと思うけど(2009.11.03)
- 江戸演劇史(2009.10.08)
- 江戸演劇史(2009.09.22)
コメント