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2006.07.06

不死身の落語家

春風亭柳桜=うなぎ書房
柳桜の、その凄まじい体験の前に、言うべき言葉は何もないのだが、数々の病と闘いながら、それらを天命として、不死身の噺家として生きていくという柳桜にとって、やはり大きかったのは、看護婦さんである別れた奥さんの存在であろう。その知識、情報を駆使して、柳桜の幾つもの病に的確に対処してきた役割は大きい。今、朝日新聞の夕刊に日本のブラック・ジャック達を紹介しているが、我々一般人がその恩恵を授かる機会はあるのだろうか?その記事を読むと現在の日本の医療現場は恐ろしいものがある。その日本の医療現場で最良の治療を受けられた柳桜の僥倖があると思う。
西荻で世話になっている人々の柳桜に対しての忌憚のない言葉、右足を切った後、開いてくれた落語会の名に、“一本立ちの会ってシャレきついですか?”と言った昇太、右足切断に続いて左足を切断することを報告に行った末広亭の故おかみさんの“あんた、がんばってヨ!”という言葉、そして両足切断してからの“うちはいつでもかまわないから、あなたが出たいと思ったらそういってちょうだいね。いつでも出番をつくるからね”という言葉、日暮里特選落語会の番頭である立川談幸に、迷惑をかけるからと、この会を抜けると言ったときの、談幸の“足切ったって喋れるんでしょ、落語。だったら待ってるよ”という言葉。これらの言葉に支えられて柳桜は生きている。

春風亭柳昇の弟子には、全て、の一文字が入っており、新作派は昇が、古典派は柳が入るということを、この本で知りました。

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