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2006.04.20

文藝別冊 総特集・古今亭志ん生

河出書房新社
内容の大半は既出のものだが、当方にとっては、初めて読むものがほとんど。
なかでも印象に残ったのは、志ん駒へのインタビュー、先代金原亭馬生と小島貞二の対談、円生、宇野信夫、坊野寿山の鼎談。
目次で志ん駒へのインタビューの項の見出しに「世の中、君の思うとおりにはいかないよ」とあるから、めずらしく志ん生が人生訓のようなものを垂れたのかしらと思ったら、そうではなく、志ん生が粗相をしてその後始末をした志ん駒に小遣いをやったので、志ん駒がまた小遣い欲しさに“師匠、たまにはウンコもらしてください”と言ったら、“世の中…”と言ったとか。また、面白いのは、パジャマの件も、志ん駒の発言と、小沢昭一・矢野誠一の対談での矢野の発言は微妙に違う。これは、誰が嘘を言ってるとかではなく、それぞれが感じたものがそうだったのだろう。
小島貞二は、かなり辛辣なことを言ったり、微妙なことを聞いたりしている。ちょっと、嫌な感じがするほどに。それに対して、馬生も言い難そうにしながらも、かなり思いきったことも言っている。次の志ん生を継ぐ話とか、志ん生という存在は他人にとっては喜劇であっても、家族(少なくとも馬生にとって)は、悲劇であるとか。また、一方で、志ん生から、“おれは碁を知らねえから『笠碁』も『碁泥』もできない。仕方がないから『雨の将棋』でやってるけど、この噺は将棋じゃだめなんだ。だから碁を習え”と言われたという話は、この話を知っただけでもこの本を読んでよかったと思っている。
しかし、なかでも一番笑ったのは、鼎談における円生の次の発言。

円生 日本橋に「日本、酒の店」というのがあって、銘酒の樽がずらりと三十ばかり並んでる。お膳があって、しじみ汁とこぶの佃煮のようなおつまみが五品ほど出ていて、これ無料なんです。つまり一本飲んだくらいじゃ出られない仕掛けンなってる。その店へ志ん生が弁当を持つてはいって「オマンマだけ食って出てこようと思ったら怒られた」 って(一同爆笑)。

当方も一緒になって大笑いしました。しかし、円生も、あちこちでかなり辛辣なことを言っているなぁ。
この本で、馬生はいろいろ言ってはいるけれど、『おしまいの噺』という本のなかにある、まった倶楽部の看板を玄関に掲げている馬生と志ん生二人の背中を写した写真がすべてを物語っているという気がします。

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